3歳娘に吃音(どもり)が出た時の話

Talk 語学
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マ、マ、マ、マ、ママー!

バ、バ、バ、バ、バ、バ…

(バナナと言えず諦める)

んっ!んっ!

(話すのをやめて指さし)

筆者
筆者

これらは娘が2歳の時に出た症状です。当時は、ショックと心配でネット検索を繰り返す毎日…この記事が、同じ境遇の方の励みになれば幸いです。

吃音を発症した時のこと

子供の様子

あれは次女が生後2ヵ月の頃…
ある日突然、2歳5カ月の長女が言葉を詰まらせるようになりました。少しつっかえるというレベルではなく、明らかに、とても不自然に、言葉が出なくなりました。苦痛そうな様子は無いのですが、ママを呼ぶ時も、自分の名前さえも、「マ、マ、マ、マ、マ、マ、ママー!」と1文字目を繰り返し、時には何度も詰まった後に、結局何も言えないまま黙ることもありました。

自分の名前やあ行から始まる言葉が特にどもりやすい

親の心境

当初は「吃音(きつおん)」という言葉さえも知らず、日記にこんなことを書いていました。

数ヵ月前から急にお喋りが始まって、話せる言葉がどんどん増えてきた。You Tubeを見せ過ぎているせいか、賢くて吸収が早すぎるからか、インプットの量に対して、アウトプットが追いつかない様子。

今思うと、これぐらい気楽で、少し親ばかな位がよかったのかもしれません。しかし、毎日どんどん悪化する言葉の詰まりに不安と心配で余裕が無くなっていきました。

もしかして発達障害?急な変化についていけず、ショックでただ検索魔になる。このまま上手く話せなかったら、学校でいじめられないかな…?お友達作れるのかな…?”親の不安は子供に伝わるから、心配しすぎは良くない”って言うけど、いや、心配でしょ!!不安だよ!!

上手く話せなくてもいつもと変わらずまっすぐな目で話しかけてくる娘とは大違いですね。

発症~完治までの経過

症状のレベル分け
  • レベル1…たまに1文字目を繰り返す
  • レベル2…常に1文字目を繰り返す
  • レベル3…1文字目を繰り返したあと黙る
  • 2歳5カ月
    発症:レベル2

    主に自分の名前とあ行から始まる言葉の1文字目を繰り返す
    例:「ま、ま、ま、ま、まま」

  • 1週間後
    悪化:レベル3

    言葉の1文字目を何度も繰り返した後、何も言えなくなって指さし
    例:「バ、バ、バ、バ…(バナナを諦め)んっ!んっ!(指さし)」

  • 2週間後
    改善:レベル1

    じじ・ばばの家に泊まりに行くと、明らかにどもる回数が減る。自宅に戻り、保育園の新学期が始まってからも悪化することなく、絵本をスラスラと暗唱することも。

  • 1カ月後
    完治?

    あんなに悩んだのが噓みたいに言葉に詰まらなくなる

  • 1カ月と
    2週間後
    再発:レベル1

    ママのイライラが伝わったのか、道路に飛び出そうとして強めに怒られたのがショックだったのか、ピーク時程ではないが、たまに言葉の1文字目を繰り返すように。不思議と保育園では気にならないらしい

  • 2ヵ月後
    完治?

    じじ・ばばの家に行くと再び改善

  • 2ヵ月と
    1週間後
    再発:レベル2

    じじ・ばばの家から自宅に戻った途端に再発。ママを呼ぶのに「マ」を10回くらい繰り返す。保育園では気にならないらしい。

  • 2カ月と
    3週間後
    改善:レベル1

    たまにつっかえるも、気にならない程度まで改善。何かを我慢する時には、たまに目をパチパチすることも…(今度はチック症を疑うも1週間程で治まる)

  • 7カ月後
    (3歳)
    完治

    3歳になって急にお喋りが上達し、以前より話せる単語が増加。言いたいことが上手くまとまらず、「あの~」「えっと…」と詰まることはあっても、吃音の症状(どもり)は無くなった。

改善と悪化を繰り返す子が多い。
じじ・ばばの家に行ったり、身体を動かしている間はどもりにくい。

育て方に問題はない?

原因は特定できないのか

まず前提として、吃音には、2~5歳児の20人に1人がなる「発達性」のものと、10代後半から発症する「獲得性」のものがありますが、今回は前者のケースです。よくネットでは、「原因は特定できない」と見ますが、本当でしょうか?本当に「育て方に問題があるわけではない」のでしょうか?下記の専門機関によると…

吃音症は、以下の要因が互いに影響し合って発症する

  • 体質的要因
  • 発達的要因(爆発的な成長による影響)
  • 環境要因(人間関係や出来事による影響)

*体質的要因(遺伝的要因)の占める割合が8割程度

国立障害者リハビリテーションセンター研究所より抜粋

つまり、一般的には、「生まれ持った体質であることが多いから、育て方のせいじゃないよ」「色々な要因が複雑に影響するから、原因の特定は難しいよ」ということです。でも、私が見ているのは目の前の我が子一人なんですよね。きっとこの記事に辿り着いた皆さんも、「じゃあ仕方ないか~」とはならず、我が子に当てはまる”答え”を探しているのだと思います。
ネット上の「一般的な」「確率の高い」情報は”ヒント”にしつつも、傍でみている家族だからそこ気づいてあげられること、ケアできることはあるのではないでしょうか。

心当たりのあった要因6つ

下記は、あくまでも我が子に当てはまる要因です。当然子供によって環境も性格も異なりますが、同じような状況の方のヒントになれればと思い共有させていただきます。

  1. 繊細な性格
    周囲の小さな変化にもよく気づく子です。食事中こぼした時に周りが「あっ!」と言うだけで、驚きとショックで泣き出すほど繊細な性格の持ち主です。ちょっと完璧主義っぽいところもあります。
  2. 急激な言葉の発達
    2歳になって急に2語文を話し出し、単語の量も増え、3歳になるまでに3語文も出るようになりました。
  3. 次女の誕生
    事前に説明してはいましたが、長女からすれば、突然ママが入院して5日間も離れ離れになり、赤ちゃんを連れて帰って来て、一緒に寝れなくなるなんて、環境の変化への戸惑い、寂しさ、不安でいっぱいですよね。
  4. 過度な干渉
    床を傷つけられたくなくて、服を汚されたくなくて、物を壊されたくなくて、つい「ダメ」と口を挟んでしまうことが多々ありました。
  5. 親のストレス
    次女の育児で寝不足が続き、ホルモンバランスも崩れ、毎日のように夫に対してイライラをぶつけていました。パパとママが言い合う姿なんて見たくないですよね…
  6. 大人同士が早口でしゃべる
    産後は母に応援に来てもらっていたのですが、母と私がマシンガントークを繰り広げているせいで長女が話す余裕が生まれないと夫に指摘されました。

効果的な対応方法は?

要因の特定が難しいからと言って、対応策が無いというわけではありません。一般的に良いとされている接し方と、娘に効果のあった対策をご紹介します。

効果的な接し方6つ

  1. 「ゆっくり話して」「落ち着いて」などプレッシャーをかけない
  2. 言い直させたり、話し方を矯正しようとしない
  3. 吃音が出ても心配そうな顔をしない
  4. 話の途中で遮ったり代わりに話さず、最後まで子どもの話を聞く
  5. 話し方にとらわれずに、子どもが伝えようとしている内容に意識を向ける
  6. ちゃんと伝わったこと、話せて楽しかったことを子どもに伝え、自信をつけさせる
幼児教室・学習支援教室のLITALICOジュニアより抜粋

当時はこの6つを何度も読み返し、とにかくプレッシャーや不安を与えないよう意識していました。何度も同じ文字でつっかえる娘を前に、「心配そうな顔をしない」のは難しく、頭の中で「気にしない…自然体で…」と自分に言い聞かせてました。話し終えるのをじーっと見て待ったり、「うん、うん」と相槌を打ち過ぎるのもプレッシャーになるんじゃないかと思い、なるべく自然に目線を送るようにして、ただ優しく微笑みながら見守りました。(多少引きつっていたかもしれません)
それから、当時ありがとうやごめんなさいを教えるつもりで言っていた「こういう時は何て言うんだっけ~?」というのもしばらくの間控えました。

実際に効果があった対策3つ

下記は、我が子・我が家に効果のあった対策です。子供によって異なりますので、ご了承ください。

  1. 厳しくしすぎない
    汚したらキレイにすれば良い。触られたくない物は隠せば良い。好奇心のままに気が済むまでやらせて親も一緒に楽しむ。危なくない限り「ダメ」を言わないように気をつける。やめてほしいときは代案で気を逸らす。自由に失敗させて一緒に学ぶ。のびのび遊べるようゆる~く。
  2. 常に子供が見ていることを意識する
    大人同士が話す時も、言葉を選んで短い文でゆっくりと。イライラや疲れを顔に出し過ぎないよう気をつける。なるべく携帯をいじらない。
  3. 夫婦でチームになる
    同じ理解のもと取り組む。まずは自分たちがのびのび楽しく生活を送って笑顔を増やす。神経質になりすぎず、なるべく楽観的に見守る。

これらを完璧にこなせたわけではありません。結局のところ何が正解かなんて、治るまで分かりません。それでも、これは娘がくれた家族の在り方を振り返るチャンスなんだと思って、日々少しずつ、その時できることを積み重ねていました。今思えば、吃音の治療というよりも自分の育児方針を見直す意識改革のようでした。

吃音が治ったきっかけ

治った時の様子

発症は驚くほど突然だったのに、治るときは数ヵ月かけて徐々に…気づけば最近どもらなくなったね~という感じでした。改善と悪化を繰り返すものなので、完治の判断には時間がかかります。つまり、吃音が治る”きっかけ”は、ある1つの出来事ではありません。本人の心と身体の成長(変化)が必要で、それには家族のサポートが必要です。そう考えると、今回娘の吃音が治った”きっかけ“は、家族の行動だったとも言えます。何もせずに自然と治るかもしれないし、何もしなければ、良い成長(変化)を遂げられないかもしれません。
悩むのも、立ち振る舞いを変えるのも、とても労力を使いますし、出来る限りのことをしたとしても、ただ治る日を待つのは辛いです。それでも、我が子に真摯に向き合ったからこそ得るものは必ずあると、最後にお伝えしたいです。

その後

3歳になり、吃音が出なくなった娘は、お喋りがとても上手になりました。吃音の症状は無くなったものの、時々、単語を忘れたり、途中で噛んだりして、長い文を思い通りに言えないと、納得のいくまで言い直すことがあります。
吃音をきっかけに発見した繊細な心完璧主義な性格は、心境を言葉に出来るようになり、以前よりも表に出せるようになりました。人よりストレスを感じ易く、傷つき易いかも…と心配にもなりますが、感受性が豊かで、人の気持ちが分かる優しい子です。
大切な我が子への心配は尽きませんが、これからも子供のもつ力を信じて一緒に生きていけることを楽もう!そんな気持ちが芽生えた出来事でした。

最後までお読みいただきありがとうございました。
下記にも言語の発達に関する記事を書いているのでよろしければ一緒にどうぞ。
私の経験が、言葉が、誰かのお役に立てれば幸いです。

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