二重国籍をもつ子供に、日本とイギリスそれぞれ別の名前を付ける方法を解説します。
二重国籍を持つ子供の名前
日本の名前
日本で国際結婚すると、何もしなければ夫婦別姓になります。そのまま日本で出産すると、子供は日本人の親の戸籍に入り、日本人の親と同じ姓を名乗ります。(例:山田 太郎)日本の名前にはミドルネームが無く、日本で外国人の親の姓を付け加えるには、家庭裁判所を通じて姓を変更する手続きが必要です。
イギリスの名前
日本で出産し、子供がイギリス国籍を取得した場合、何もしなければ日本の名前=イギリスの名前になります。(例:Taro Yamada)しかし、イギリス政府に対して当記事に記載した方法で日本とは別の名前を申告すると、日本の名前はそのままで、別途イギリスの名前を取得することが出来ます。例えば、両親の姓を付けてダブルネーム(複合姓)にすることができるのです。(例:Taro Yamada-Smith)尚、イギリスでは2つの姓をハイフンで繋ぐ表記が一般的ですが、ハイフンを入れずに登録することも可能です。
子のイギリス国籍と関連手続については下記の記事をご覧ください。
名前を2つ持つとどうなる?
メリット・デメリット
航空券の予約に使う名前
航空券の氏名(予約名)は、パスポート名と完全に一致しなければなりません。パスポート名が日本とイギリスで異なる場合は、どちらの氏名で予約をしても問題ありません。(※日本とアメリカではアメリカのパスポート名を使う方が良い等、国によって違います)
どちらの氏名を使うにしても、下記の点に要注意です。
搭乗するパスポート名で予約
航空券の氏名(予約名)は、フライトチェックイン(搭乗手続き)の際に、パスポートに記載された氏名と照合されます。どこの国を出発する場合でも、航空券と同じ名前のパスポートをチェックイン時に提示しなければなりません。尚、出入国審査では、航空券はチェックされず、出入国を行う国のパスポートを提示します。(例:日本名で予約→イギリス発のフライトチェックインは日本のパスポート→イギリスの出国手続きはイギリスのパスポート)
日本のパスポートへの別名併記
国際結婚や重国籍により、日本の戸籍に記載されていない名前を持つ方には、日本のパスポートに括弧書きで別名・別姓を併記する制度があります。(例:Taro / Yamada (Smith))詳しくは、在サンフランシスコ日本領事館のサイトが分かりやすいです。しかし、これは日本独自の制度なので、結局のところ航空券の予約名は括弧書きの別名を省いた氏名を使います。
イギリスのダブルネーム取得方法
パスポート申請
“Deed poll”の発行
パスポートを申請する際、必要書類に“Deed poll”という書類を加えることで同時に氏名変更の申請ができます。18歳未満の子供の名前を変更する場合、こちらからフォームをダウンロードして必要情報を記入し、両親が署名した原本を指定された部署に送ります。申請料として£42.44(1ポンド=160円の場合:約6,800円)かかります。
※2023年10月追記:読者様からの情報によると、Deed pollはイギリスに移住していないと手続きできないとのこと。私はまだ試みなことがないのですが、元々このシステムは気に入らない名前を付けてしまった/付けられてしまった方が氏名変更をするもので、イギリスで生活するにあたって使用する公式な氏名(日本でいう通称名)を登録するもののようです。
イギリスのパスポート取得方法は、下記の記事をご覧ください。
出生届(※書類テンプレあり)
前提として、日本でイギリス人の子を出産した場合、イギリス国籍の取得にイギリスの出生届(Birth registration)は必要ありません。しかし、今回のようにダブルネームを取得したい方や、イギリスに移住する予定の方は、あえて出生届を出すこともできます。
申請方法
イギリスの出生届は、イギリス政府の公式サイトにある”Start now”ボタンから、必要項目を入力していくと、個々に合った必要書類や申請の流れについての案内が表示されます。その案内ページにあるリンクから①書類のダウンロードと②支払いを済ませ、③書類一式を送れば完了です。手続きには書類受理~証明書発行まで最大3カ月かかるようです。
必要書類
書類は下記に「コピー(英:photocopy)」と記載が無いものはすべて原本を提出します。手続きが終われば返却されます。
申請書
申請書は、公式サイトより“Birth registration form”をダウンロードして、記入、印刷、署名をします。記入例を作成してみたので、よろしければ参考にしてください。
氏名確認書
日本の出生証明書と異なる名前を登録したい場合は、公式サイトより“Name confirmation form”をダウンロードします。子の名前と親のサインを記入するだけの簡単な書面なのですが、この簡易的なフォームを使用できるのは下記のケースに限られます。(それ以外は”Deed poll”を用意します)
子の出生証明書
日本では、「出生届記載事項証明書」と言う書類がこれに該当します。子供の出生届を提出した市区町村の役所または本籍地の役所で取得できます。
原本と英語の翻訳を提出する必要があり、翻訳は個人ではなく企業等により正式に発行&捺印されたものでなければいけません。公証人による認証は必要ありませんが、業者は国際結婚や国籍取得関連の翻訳に慣れている業者が安心です。言語や文字数、書類の種類に応じた料金設定があるので、まずは見積もりを取ってみてください。
文字数により変動しますが、我が家が利用した㈱日本リンガサービスさんの場合、出生受理証明書+戸籍謄本+結婚証明書で合計17,500円(税抜)でした。
日本人の親の戸籍謄本
戸籍謄本は、現住所ではなく本籍地の役所で取得します。出生証明書と同様、原本に正式な英語の翻訳を添付して提出する必要があります。
親の結婚証明書
日本では、「婚姻届受理証明書」と言う書類がこれに該当します。発行できるのは婚姻届を提出した市区町村の役所だけです。出生証明書と同様、原本に正式な英語の翻訳を添付して提出する必要があります。
イギリス人の親の出生証明書
イギリスの出生証明書は、ロングバージョン(本人だけでなく親の情報も記載されたA4サイズのもの)を発行する必要があります。イギリスでないと発行できないので、イギリスにいる家族に頼んで発行してもらいます。イギリスで発行した書類は、わざわざ日本を経由させず、直接担当部署(Overseas Registration Unit)に送っても大丈夫です。
イギリス人の祖父母の国籍証明
イギリス人の親の親(子の祖父母)がイギリスで生まれずにイギリス国籍を取得した場合は、国籍の証明になる書類の原本を申請書一式に同封する必要があります。下記を用意してもらうように祖父母にお願いします。
“Birth registration form”より抜粋
- The original certificate of Naturalisation
- Letter from Home Office confirming ILR or
- Any other relevant evidence i.e ILR stamp in passport
申請料・証明書発行料・送料
出生届には、出生登録に£150/人、登録証明書の発行に£50/通、登録証明書と提出書類の郵送に£22.50/1.5kgで、最低でも£222.50(1ポンド=160円の場合:約35,600円)がかかります。オンライン決済ページに従って入力を進め、提示された金額をクレジットカード(VISAかMaster)で払います。支払い後に発行される確認番号(”Reference number”)を申請書に記入して完了です。支払い後4週間以内に書類一式を提出する必要があるため、すべて揃ってから行ってください。
尚、上記の書類はパスポートの申請書類と重複するものが多いため、日本で暮らす方には出生届ではなくパスポートの取得をおすすめします。出生届とパスポートを同時申請する場合は、重複書類は省けます。
私は当時、イギリス国籍の取得に出生届が必要だと勘違いし、長女だけ出生届でダブルネームを登録しました。上記を知った後、次女は出生届・パスポート取得ともに必要になってからゆっくり準備すれば良いか~とのんびり様子をみています。将来子供に日本名だけにするかダブルネームが欲しいか聞いてから、必要なら変更手続きをするのでも良いかもしれません。
まとめ
イギリスのダブルネーム(複合姓)やミドルネームは、パスポートや出生届の申請と一緒にを取得することができます。日本ほどではありませんが、氏名を変更するというのは割と重めな手続きになるため、どちらも費用と手間がかかります。
名前を2つ持つことは、必ずしも子供の将来に役立つとは限らないので、メリット・デメリットを考慮した上で選択してあげたら良いかと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。我が家の体験談が、少しでもお役に立てれば幸いです。
コメント
こんにちは。
昨年末イギリスより一時帰国し日本で出産したため、日本からのイギリスパスポート申請に向けてリサーチしていたところ、こちらの記事に辿り着きました。
まさに知りたかったことが大変詳細に書かれており、参考にさせていただいております。ありがとうございます。
1点、差し支えなければご教示いただきたいのですが、
イギリスのパスポートにはミドルネームを入れたいと思っており、出生届(&name confirmation form)とパスポートを同時申請をしようと思っております。
記事内に「出生届とパスポートを同時申請する場合は、重複書類は省けます。」と書かれておりましたが、それぞれの書類の送付先が異なるかと思うのですが(Foreign Commonwealth & Development OfficeとHM Office)、どのように書類を送付されましたでしょうか。
お手隙の際にご返信いただけましたら幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
yurikaさま
この度はコメントを頂きありがとうございます。
ご返信が遅くなり申し訳ありません。^^;
過去のデータを辿ったのですが宛先が見当たらず…
ただ、記憶では、1カ所にしか送っていません。
UKの申請サイトがとても分かりやすくできており、
申請を進めていくと、各個人に合った必要書類や条件、
書類の送付先から問い合わせのメールアドレスまで
とても丁寧に順を追って案内してもらえるので、
申請を進めて頂ければ明確になるかと思います。
あまり参考にならないかもしれません。
折角のご縁ですので、引き続きブログをお役立て頂けると嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
Mikiさま
お忙しいところご返信頂きまして、ありがとうございます。
こちらこそ返信が遅くなり大変申し訳ございませんでした。。
出生届、パスポートともにオンライン申請は完了し、あとは書類送付のみなのですが、指定された送付先が異なる住所だったため上記の質問をさせて頂いた次第でした。
Foreign Commonwealth & Development Office Overseas Registration Unitの問い合わせ先は分かるので、そちらに一度問い合わせてみようと思います。
アドバイス頂きまして、ありがとうございました!
またブログ拝見させていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。